KPIダッシュボードとは~基礎知識から導入メリット・ステップを解説~
近年、IT技術が急速に発展・浸透し、企業経営においても「データ分析」や「データ活用」が欠かせない時代となりました。
あなたの会社は蓄積された貴重なデータをきちんと利活用できていますか?
データ活用が当たり前の時代で取り残されないために、この記事ではデータ活用の基礎知識を交えて、
データ分析においてデータを可視化し、意思決定のスピードを上げるダッシュボードについて説明します。
その中でも、KPI管理にフォーカスし、ExcelやGoogleスプレッドシートでの煩雑な管理から離脱し業務効率化する方法をご紹介します。
KPIダッシュボードの基礎知識
まずはKPIダッシュボードの基礎知識からご説明していきます。
KPIダッシュボードとは
KPIダッシュボードとは、企業や組織が設定した重要業績評価指標(Key Performance Indicators:KPI)をリアルタイムでモニタリングし、視覚的に表示するツールです。
KPIは、目標達成の進捗を測るための指標であり、例えば売上、顧客満足度、リード獲得数、生産効率などが該当します。
KPIダッシュボードはこれらの指標を一元化し、ユーザーが状況を一目で把握できるように設計されています。
KPIダッシュボードの価値
ビジネスにおける問題解決の考え方は多数ありますが、一般的には以下の4ステップで考えることができます。
①課題分析
理想と現状の差分を定量的に特定
②問題特定
差分の発生個所の特定
③真因特定
原因を深掘りして真因を探る
④解決策立案
解決策の立案と評価
この4ステップのうち、課題分析・問題特定のスピードアップを図れることが、ダッシュボードの本質価値となります。
KPIダッシュボードは、設定した目標に対する進捗状況をグラフやチャートを使って表示します。
これにより、何が順調で何が改善を要するかが瞬時に分かります。
リアルタイムのデータを提供するため、経営者やチームリーダーは状況に応じた迅速な意思決定が可能になります。
そのため、KPIダッシュボードを導入すると、分析~意思決定までのスピードを速めることができ、PDCAサイクルで言うと"C"の部分を大幅に時短できるのです。
KPIダッシュボード構築のメリット
上述したKPIダッシュボードの本質価値に加えて、構築メリットを簡単に紹介します。
1.部門間の透明性と連携強化
全社的なKPIを共有することで、部門間での情報共有がスムーズになり、一貫性のある運営が可能になります。
2.業務効率と生産性の向上
手動での報告作業が不要となり、より重要な意思決定や戦略策定に集中できます。
3.費用対効果の最大化
データを活用した経営により、リソースの無駄を削減し、投資の成果を最大化できます。
KPIダッシュボードは、経営者や事業責任者にとって「状況把握」「判断」「実行」を効率的かつ的確に行うための必須ツールと言えます。
構成要素
KPIダッシュボードの価値・メリットを理解した後は、KPIダッシュボードの基本構成を把握しておきましょう。
KPIダッシュボードは一般的に以下の要素で構成されます。
構成要素 | 説明 | 例 |
---|---|---|
KPI一覧 | 追跡・評価するべき重要業績評価指標(Key Performance Indicators)を定義。目標達成状況を数値で表す指標。 | 売上高、利益率、リード数、在庫回転率 |
データソース | ダッシュボードに必要なデータを提供するシステムやファイル。ダッシュボードはこれらと連携してリアルタイムで更新される。 | CRM、ERP、Google Analytics、Excelシート |
視覚化ツール | データを直感的に把握するためのグラフやチャート。ユーザーが状況を一目で理解できるように工夫する。 | 折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフ、ゲージ |
デザイン要素 | 視覚的な整理とユーザビリティを高めるための要素。主要なKPIは目立つ位置に配置し、カラースキームやフォントを統一して読みやすくする。 | KPIに応じた色(赤は異常値、緑は正常値 等)、レスポンシブレイアウト |
フィルター機能 | データを絞り込むための機能。必要な情報を迅速に取得できる。 | 時間範囲(月別、週別 等)、地域別、製品カテゴリ別 |
ドリルダウン機能 | 詳細情報を深掘りするための機能。指標からさらに具体的なデータを取得可能にする。 | 売上高 → 地域別売上 → 店舗別売上 |
リアルタイム更新機能 | データを最新の状態に保つ機能。外部システムとの連携により、自動的に情報がアップデートされる。 | リアルタイムで売上やアクセス数が更新されるダッシュボード |
アラート機能 | 異常値や目標未達成の場合に通知を出す機能。問題を迅速に認識し、対応を促進する。 | KPIが目標値を下回った場合にメールや通知でアラートを送信 |
視覚化ツールに代表されるBIツールには様々な種類があるため、ダッシュボードで得たい情報やコスト面等を考慮して選ぶ必要があります。
また、ツールによって対応可能なデータソースが異なるため、自社で既に導入しているデータソースと相関性があるか、事前に調べておく必要があります。
より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
KPIダッシュボードの導入ステップ
さて、KPIダッシュボードの基礎知識をインプットできたら、次はKPIダッシュボードの導入ステップを見ていきましょう。
目的設計/要件定義~ダッシュボード構築まで、データ活用・可視化における一連の流れは以下のようになります。以下の5つのステップと各項目について、解説します。
① 目的設計/要件定義
ダッシュボード構築の成功には、まず「何を目指すのか」「何を解決したいのか」を明確にすることが重要です。
このステップでは、ダッシュボード構築の目的と必要な要件を整理します。
目的設計
ビジネス課題整理
企業が抱える問題を明確化し、それに基づくダッシュボードの必要性を洗い出します。
例:売上減少の原因特定や生産性向上のための指標可視化。
業務情報整理
業務プロセスを把握し、どの情報がKPIに影響を与えるかを整理します。
例:営業プロセス、在庫管理、顧客満足度調査のデータフローをマッピング。
KGI、KPIの整理
最終的な目標(KGI)と、その達成度を測る指標(KPI)を定義します。
要件定義
要件定義書
必要な機能、データソース、ダッシュボードの利用者、更新頻度を明文化します。
例:データ更新はリアルタイム、ユーザーは営業部門と経営層。
プロジェクト計画書
スケジュール、リソース配分、チーム体制を策定し、プロジェクトの進行を計画します。
② ダッシュボード設計
このステップでは、要件に基づいて具体的なダッシュボードの構造や見た目を設計します。
分析設計
要件詳細定義書
要件定義書を基に、ダッシュボードに必要な詳細仕様をまとめます。
例:表示する指標、グラフの種類、フィルタリング機能の内容など。
データ調査
必要なデータがすべて揃っているか、不足データを補う方法を検討します。
デザイン
視覚的にわかりやすい構成を検討します。色使いやレイアウトを明確化します。
ワイヤーフレーム作成
ダッシュボードの構造を紙やデジタルツールでスケッチし、全体像を共有します。
モックアップ作成
ワイヤーフレームを基に、実際に近い状態のデザインを試作。関係者と確認します。
③ データマート設計&実装
データを統合・整理し、ダッシュボードで活用できる状態にするプロセスです。
データマートとは、特定の業務や部門向けに最適化された小規模なデータベースのことです。
データウェアハウス(DWH)が全社的なデータを統合するのに対し、データマートは特定の目的(例:営業、マーケティング、財務)に特化して設計されています。
データマート設計
テーブル設計
ダッシュボードで使用するデータを整理し、必要なテーブル構造を設計します。
E-R図作成
データ間の関係性を視覚化することで、データモデルを明確にします。
データマート実装
API連携
外部システムやデータベースから必要な情報を取得する仕組みを構築します。
パイプライン構築
データを収集・加工・保存する流れを自動化するプロセスを設定します。
前処理
不要なデータの削除や形式の統一を行い、分析に適した状態に整えます。
少し専門的な言葉を用いると、バックエンドシステムでは、データレイク・データウェアハウス・データマートの3層構造でデータを保管、それぞれの間ではデータパイプラインを構築しデータを連携することが一般的です。
④ ダッシュボード構築
設計に基づき、実際にダッシュボードを作成します。
実構築
関数/指標名の作成
データから必要な指標を算出するための計算式を設定します。
例:売上=単価×販売数。
チャートの作成
KPIごとに適切なグラフやチャートを選び、視覚的に情報を整理します。
フィルターの配置
地域や期間など、ユーザーが必要な情報を絞り込めるフィルターを設置します。
動作確認
全体の動作をチェックし、不具合やデータの齟齬を修正します。
⑤ 運用
構築したダッシュボードを日常業務で活用し、改善を続けます。
運用
運用モニタリング
ダッシュボードが正しく動作しているか、定期的にチェックします。
例:データ更新が遅れていないか、不具合が発生していないかの確認。
改善案の提案&実行
利用者のフィードバックを基に、使い勝手や機能の改善を実施します。
整合性確認サポート
新たなデータソースが追加された際、既存のデータと整合性を保つためのサポートを行います。
自走支援
導入説明会自走支援
利用者がダッシュボードを効率的に活用できるよう、説明会やトレーニングを実施します。
分析手法レクチャー
社員が自分でダッシュボードをカスタマイズしたり、分析したりできるように教育します。
KPIダッシュボードの構築には、段階ごとに明確な目的と手順が必要です。
これらのステップを順序立てて実施することで、ビジネス課題を解決し、組織の意思決定を強力に支援するツールを構築できます。
ダッシュボード構築に関連して、データ分析基盤について、上述したデータマートやデータウェアハウス(DWH)についてまとめた記事も作成しているので、
詳しく知りたい方は以下のリンクからご覧ください。
KPIダッシュボードツールの紹介
ここまで、KPIダッシュボードの基礎知識・導入ステップについて説明してきました。
最後に当社bizdataがおすすめするKPIダッシュボード構築ツール(BIツール)をご紹介します。
Tableau
「データ可視化ツールといえば"Tableau"」と言っても過言ではないほど、可視化ツールとしてメジャーなツールです。
可視化バリエーション、データ量・処理速度といったパフォーマンスの面に強みがあり、コストは高いですが、本格的にダッシュボードで分析や表現を行う方には最適なBIツールです。
Power BI
Power BIはTableauを追随し、Googleの検索数では世界トップのBIツールです。
可視化バリエーション、コスト、パフォーマンス、すべてにおいて高水準であり、オールラウンドなBIツールで、特にMicrosoft製品の扱いに慣れている方におすすめです。
Excelと相性が良い点がKPIダッシュボードの構築でもポジティブに働くでしょう。
Looker Studio
Looker Studioはコストが低く、直観的な操作が可能で扱いが容易な点、Googleサービスとの親和性が強みのBIツールです。
無料版でも操作制限が少ないため、まずは簡単なツールから試してみたい方におすすめのツールです。
以下が上述の3つのBIツールを比較した表になります。
より詳しく比較した資料も用意しておりますので興味のある方は以下より資料をお求めください。
最後に
KPIダッシュボードの基礎知識から導入ステップまで具体的に解説しました。
KPIダッシュボードは、企業が戦略目標を効率的に達成するための強力なツールです。
正しいKPIを選定し、デザインや運用方法を工夫することで、業務改善や意思決定の迅速化に貢献します。
データ活用を目的として導入する際には本記事に書かれていた内容を参考にしていただければ幸いです。
導入時にお困りの際や、目的設計・要件定義から手伝えってほしい、より詳しい情報を知りたい方はお気軽にbizdataにご相談ください。